3101人が本棚に入れています
本棚に追加
/698ページ
***
「もぉ! 食べるにしてもせめてちゃんと座ってから!」
追い立てるようにリビングに温和を追いやると、ソファに並んで座って透明な袋を開ける。
「暑……」
温和がつぶやいて、アイスをくわえたまま足で扇風機のスイッチを入れた。
「温和、お行儀悪い!」
言ったら、「音芽さん、まるで学校の先生みたいですよ」って笑うの。
いや、私もあなたも先生じゃん!
思ったけど、確信犯だろうし、と思ってあえてスルー。
なのに、「わー、今日の音芽、やけに塩対応っ」とか。
だって私、夕飯作りさせてもらえてないし、結構ソワソワしてるのよ?
それに……何より――。
酸味のあるアイスを一口かじりながら、温和をチラッと窺い見たら、「あー、ごめんって。次はお前の好きなアーモンドチョコのやつ買っていいから。……な?」って。
温和め。分かってて自分の好きな方を優先したのね?
思ったら、何だか急におかしくなった。
「温和、ホント子供みたい」
2つ年上で、お兄ちゃんみたいな頼れる存在。
それが、私がずっと温和に対して抱いていた評価だったんだけどな。
一緒に暮らすようになって、案外彼は子供っぽいところがある可愛らしい人だ、と気付かされた。
「そういうの、嫌い?」
気が付けば、いつの間にかアイスを食べ終わっている温和に、ウソォ!って思う。
「な、音芽。答えろよ」
最初のコメントを投稿しよう!