鳥飼先生、大丈夫ですか?

3/7
前へ
/698ページ
次へ
「あ、あの荷物……」  温和(はるまさ)が持ってくれているカバンを受け取ろうと手を伸ばしたら、「どうせ隣の席ですし、鳥飼(とりかい)先生のデスクまで運んでおきますよ」とかわされてしまった。  相変わらず、惚れ惚れするほどの変わり身で、二人きりの時とは私に対する言葉遣いまで変わっている温和(はるまさ)に、感心してしまう。 「鳥飼先生、ホントに大丈夫ですか? ……ぼ、僕に掴まりませんか?」  温和(はるまさ)が私から離れたのを見て、鶴見(つるみ)先生がそう声をかけてくださったけれど、私はフルフルと首を横に振った。 「お気遣いありがとうございます。ここからは物伝いに歩けますので、どうか気になさらないで?」  わざと距離を置くような丁寧な言い方をして会釈(えしゃく)をすると、自分の席までの間に並ぶ、机や棚などを頼りに歩いて、無事デスクにたどり着いた。  その間中、私の後ろをオロオロとした様子で鶴見先生が付き従っていらして……何だか少し落ち着かなくて。 (気にしないでって言ったのに……)  呆気なく私を置いて行ってしまった温和(はるまさ)と、私を放置できなくて金魚の糞状態になってしまった鶴見先生。  どちらの男性のほうが、人として正解なんだろう?  ふとそんなことを思って、温和(はるまさ)と鶴見先生を見るとはなしに見比べたら、温和(はるまさ)に睨まれて、慌てて視線を逸らす。
/698ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3104人が本棚に入れています
本棚に追加