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「寒いっ」
油物を洗うためにお湯を使っているので手は温かいのだけれど、スリッパの中で両足の指先が段々冷たくなってきていた。
「く、靴下っ」
冷え始めてしまってからでは手遅れだと分かっていながら、履かないよりは……と思い直した音芽は、水を止めてタンスに向かう。
靴下を入れてある引き出しから、モコモコ素材の室内履き専用厚手ソックスを取り出すと、いそいそと足に被せる。
パステルカラーの、ボーダー柄になったそれは何だかカラフルなイモムシを連想させる。
(アリスに出られそう)
『不思議の国のアリス』の挿絵みたいな配色だと勝手に想像してそんなことを思いながら、フニフニと足指を動かしてみて、クスッと笑った音芽だったけれど。
ふと自分がとっても子供らしいことをしていると我に返って恥ずかしくなる。
「あ、洗い物の続き……」
つぶやくように言って、音芽はいそいそとキッチンへ戻った。
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