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音芽は、パジャマの上に羽織っていた薄手のカーデガンを脱いで布団の上に広げるように置くと、眠っている温和を起こさないようにそっと自分の寝床にもぐり込んだ。そうして、いそいそと口許まで布団を引き上げる。
当たり前だけど敷布団も掛け布団も冷たく冷え切っていて、口許までスッポリ覆ってみても、身体はなかなか温まらない。
そればかりか、逆に布団に体温を奪われてしまうような錯覚まで覚える始末。
音芽はしばらくの間、布団の中でまん丸になってみたり、両足をすり合わせて見たり、色々試みてみたのだけれど――。冷たくなり切ってしまった足先はなかなか温かくなってくれなくて、そのせいで眠気も一向に降りてきてくれない。
1時間近く布団の中でごそごそもそもそ頑張ってみたけれど、足指は依然冷たいまま。
このまま時間だけが過ぎていくのかな?と思ったら明日の仕事のこともあるし、段々気持ちが焦って余計に目が冴えてきた。
(どうしよう……)
いつもなら温和がギュッと抱きしめてくれて、あちこちに触れられているうちに身体が――色んな意味で――段々熱を帯びてくるのだ。
今夜はそれがない。
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