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音芽は、薄闇に慣れてきた目で隣の布団で眠る温和をじっと見つめる。
規則正しく聞こえてくる温和の寝息にソワソワと心臓が高鳴り始めて、私、一体何を考えているの?と頬をつねりたくなった。
寒がりの癖に靴下を履いたまま布団に入るのが苦手で、素足にならないと落ち着かないというのも、音芽の足先が温まらない要因なのかもしれない。
音芽はふと脱衣所のカゴに脱ぎ捨ててきた芋虫靴下を思い浮かべて、でも、と思い直す。
あれを履いたまま布団に足を入れたなら、ゴワゴワとした違和感で眠れなくなりそうだ。
だったら――。
音芽は小さく息を飲むと、そっと探るように温和の布団の端っこをめくる。
そうして恐る恐る冷え冷えの足先をそちら側へ挿し入れて――。
(わぁ、あったかい……)
眠っている人の体温というのは、常より高めだというのもあると思う。
でもこの温かさはそれだけじゃない気がする音芽だ。
温和の様子を用心深くチェックしながら、彼を起こさないように、ちょっとずつ彼の布団の中心を目指す。
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