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温和の意識がないのをいいことに、彼の布団に――足だけとはいえ――忍び込もうとしているとか……。何だか考えてみたらすごく恥ずかしいことをしている気がしてしまって、別にエッチなことを仕掛けているわけではないはずなのに、音芽の心臓は壊れてしまいそうなぐらいバクバクし始めた。
(た、体勢がちょっぴり苦しいから仕方ないんだもん)
足だけを温和の布団に入れると、身体を斜めにするか、腰をくの字に折り曲げるかしなくてはいけない。それは眠るには少しきついから。
音芽はそんなもっともらしい理由をつけると、身体ごとゴソゴソと温和の布団にもぐり込んだ。
(あ。温和のにおい……)
恐る恐る彼の布団の端っこに間借りするみたいに入ったら、ふわりと温和の清潔感あふれる石けんの香りが鼻先をくすぐった。
同じバスグッズや洗濯洗剤を使っているはずなのに、温和からの芳香は自分が身に纏ったモノとは全く違って感じられるのは、きっと彼自身の体臭と混ざるからに違いないと音芽は確信していたりする。
その香りがたまらなく大好きで、温和の存在を否が応にも突きつけられて、自分は今、大好きな温和の布団に忍び入っているのだと自覚させられる。
途端、キュン、と下腹部が疼いて、音芽は自分のはしたない反応に驚いた。
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