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「音芽、和音はもう寝たから」
バレンタインデーの日に、俺にだけプレゼントがないのは、どう考えても不公平だろ?
今日だけは、チョコを差し出したことと引き換えに、音芽に日頃はなかなかさせてもらえないような無理をふっかけても許される日、と言うことになっている。ま、俺の中では、だけど。
「俺宛のチョコ食ったんだし、逆らえねぇよな?」
職場でもらった義理チョコの山も、俺は2人に捧げている。
ただし、無償の愛を注ぐのは娘にだけ。
音芽に対してはギブアンドテイク。きっちり対価をもらう。
「あ、の……でも温和。私たち明日も仕事、だよ?」
「ああ、そうだな。だからさっさと始めようか? ――音芽、脱げよ」
日頃は俺が脱がしていく服も、今日だけは自分から全部脱いでもらう。
「で、電気……」
パジャマのボタンに手をかけながら、ソワソワと灯りを気にする音芽に、
「今日はさ、明るいところで隅々まで見せてもらいたいんだけど?」
と意地悪く笑えば、音芽が真っ赤な顔をしてモジモジする。
裸なんて、今まで俺に散々あばかれてきただろうに。イチイチ反応が初々しくてたまらねぇ。
「早くしねぇとバレンタイン、終わっちまうんだけど?」
――お前から俺へのプレゼント、結局ゼロなわけ?
わざとガッカリしたように付け加えたら、「ち、違っ」て慌てるの、本当可愛い過ぎだろ!
「なら、出来るよな?」
声を低めて音芽を追い詰める。
さて今年は何をしてもらいましょうかね?
そうだなぁ、とりあえず――。
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