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誕生日当日は温和の部屋に来るように言われた音芽だったけれど、身ひとつで来てくれたんで構わないという温和の言葉に、正直かなり戸惑った。
アパートで隣同士に住んでいる音芽と温和なので、何かいるものがあれば取りに帰ればいいだろ?ということなのかもしれない。
でもプレゼントは?
全くなしというわけにはいかないよね?
要らないと言われても音芽自身の気がすまないのだ。
温和と同日生まれの兄に相談しようかとも思ったけれど、下手な聞き方をしたらヤブヘビになりそうでつつけなくて。
とりあえず兄にはメールで「カナ兄、お誕生日おめでとう!」というメッセージだけ送っておいた。プレゼントは後日でいいかな、と思いつつ。
散々悩んだ末、音芽は前日から仕込みをしてディナーロールを焼いたりシチューを煮込んだり、予め焼いておいた小さなバースデーケーキのスポンジにデコレーションをしてみたり、とフルタイムで仕事をこなした後にしてはそこそこに頑張った。
プレゼントは要らないと言われたけれど、何もあげないとか無理だから。
温和が職場や家で使えるような、自分と何となくお揃いのマグカップを用意した。
〝何となく〟というのは、あからさまにペアだとバレたらひねくれ者の温和が、恥ずかしがって使うのを躊躇うかな?と思ったから。
ちょっとした色違い。ちょっとしたデザイン違い。そんなマグカップを、ネットで探して取り寄せて、ラッピングは自分で頑張った。
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