1.温和のおねだり

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「ひゃっ」  途端音芽(おとめ)がビクッと肩を跳ねさせて、その反応に温和(はるまさ)が満足そうにニヤリとする。  好きだとは素直に言ってやらないくせに、いちいち音芽を振り回すような行動をとるのは温和(はるまさ)の悪い癖だ。  鈍感な音芽にも温和(はるまさ)の言わんとしているところは分かったけれど、だからと言って「好きだ」と言われなくても平気というわけではない。  ちゃんと言葉にして欲しいのに、それはなかなか与えてくれなくて。  なのにこんな風にいきなり色々すっ飛ばして〝男と女〟を意識させられるようないじり方をされたら、そういうことに不慣れな音芽は堪らなく困ってしまうのだ。  温和(はるまさ)とそういう関係になってまだ日が浅いし、そもそも奏芽(かなめ)温和(はるまさ)によって男たちを遠ざけられてきた音芽には、全くもってその辺りの耐性がない。 「い、意地悪っ」  でも分かるからこそちゃんと言って欲しいのだ。〝俺も好きだよ〟と。
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