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「俺さ、お前のそういう真っ直ぐなところ、嫌いじゃないぜ?」
ケーキを片手に音芽の背中を押しながら、温和がククッと笑う。
「――じゃあ、……好き?」
不意に立ち止まって温和の方を振り返ると、音芽が我慢できないみたいにそう問いかけてきた。
予想外の動きに、温和は危うく持っていたケーキを落としそうになってドキッとする。
今日は温和の誕生日だと言うのに、さっきから音芽は、主役であるはずの温和に、まるで「好き」だと言わせたいみたいな言動をする。
それは、結局のところ温和の言葉が足りなさすぎることの裏返しなのだけれど、分かっていても「好きで好きでたまらねぇよ」なんて言ってやれないのが温和という男だ。
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