2.好きじゃないとか嫌いじゃないとか

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*** 「俺さ、お前のそういう真っ直ぐなところ、嫌いじゃないぜ?」  ケーキを片手に音芽(おとめ)の背中を押しながら、温和(はるまさ)がククッと笑う。 「――じゃあ、……好き?」  不意に立ち止まって温和(はるまさ)の方を振り返ると、音芽が我慢できないみたいにそう問いかけてきた。  予想外の動きに、温和(はるまさ)は危うく持っていたケーキを落としそうになってドキッとする。  今日は温和(はるまさ)の誕生日だと言うのに、さっきから音芽は、主役であるはずの温和(はるまさ)に、まるで「好き」だと言わせたいみたいな言動をする。  それは、結局のところ温和(はるまさ)の言葉が足りなさすぎることの裏返しなのだけれど、分かっていても「好きで好きでたまらねぇよ」なんて言ってやれないのが温和(はるまさ)という男だ。
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