2.好きじゃないとか嫌いじゃないとか

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「ああ、嫌いじゃねぇな」  音芽(おとめ)のなけなしの勇気を無下にして、さっきと同じ言葉を繰り返した温和(はるまさ)は、 「ほら、モタモタしてたらクリームが溶けてきちまうだろ。さっさと部屋の鍵開けろよ」  話題を逸らしてそっぽを向く。  音芽(おとめ)はそんな大人気のない温和(はるまさ)の言葉に、大人しくドアの鍵を開けると、温和(はるまさ)からケーキを受け取ってキッチンに置かれた冷蔵庫を開けた。  ケーキを入れるスペースを作るため、サラダボールに入ったミニトマトたっぷりのサラダを食卓に置くと、 「私……」  出来た隙間にケーキを仕舞いながらポツンとつぶやく。    温和(はるまさ)が、そんな自分の声に視線を投げかけてきたのを確認してから、音芽は続きの言葉を発した。 「私……温和(はるまさ)のそういうひねくれたところが好きじゃないです」  温和(はるまさ)の物言いを逆手に取って「嫌いです」とは言わずにおいた。  でも、音芽にしては十分すぎるぐらいの反旗だ。  温和(はるまさ)は珍しく反抗的な音芽(こいびと)の言葉に大きく瞳を見開くと、「バカか」と言おうとして――。  音芽の至極真剣な眼差しに、思わずその言葉を飲み込む。
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