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3.今日は温和の誕生日だよ?
「どうぞ」
温和の後をついて、音芽自身何度も足を踏み入れたことのある彼の部屋に入る。
やっぱりお皿だけでも洗ってくるべきだった、虫が来そうで嫌だなぁなんて、温和に気付かれない様、小さく吐息を落とした音芽は、見るとはなしに投げかけた視線の先に、信じられないものを見つけて息を飲んだ。
見慣れたはずの温和の部屋の一角。
基本的に単調なモノトーンで統一された温和の部屋のなか、そこだけ異彩を放っている。
(うそ……。何あれ……)
何だかよくわからない状況に、音芽は靴を脱ぎかけた姿勢のままフリーズした。
フランス人形が着ていそうな、フリルフレアがふんだんに使われたシャンパンゴールドのドレスが、トルソーに着せ掛けられて鎮座ましましていて。
胸元やフリルの裾、袖口などに金糸で施された刺繍がゴージャスさに拍車をかけている。
そのシルエットは、これでもかというぐらい絞られたウエストとは対照的に、大きく広がったヒップラインから下のラインがとても女性らしくて素敵。
ヴィクトリア王朝の姫君を彷彿とさせられるような、そんなドレス。
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