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それはそれは豪奢で心奪われるドレスだけれど、それだけに如何にも〝男の部屋〟といった雰囲気の、飾り気のない温和の部屋には余りにもそぐわない代物だ。
音芽が戸惑ってしまったのも無理はない。
「は、るまさ? コレ……」
なぁに?と聞きたいのに、一気に押し寄せる情報に圧倒されて、その言葉が出てこない。
ふと見れば、ソファそばのローテーブルの上にはそのドレスに似合いそうなネックレスやイヤリングまで用意されていた。
「見て分かんね? ドレスだけど」
靴を脱ぎかけた姿勢のまま、所在なく玄関先に立ち尽くした状態で動かなくなってしまった音芽に、焦れた様子で温和が手を伸ばす。
「とりあえず靴脱いで上がれ」
待ちきれないとばかりに、半ば強引に音芽の手を引いて急き立てると、そのままドレスの前まで連れて行った。
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