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「すげぇ豪華に見えんだろ?」
だけど実際はそんなに高くないから安心しろと耳元でささやかれて、音芽は「何に安心するのですかっ、温和さん!」と声にならない悲鳴を上げる。
この口ぶりから察するに、温和はこのドレスを音芽に着せようと買ったのに違いない。
「もっ、もしかしてコレを私に着ろとか」
言わないですよね!?と言いたかったのに「お前以外に誰が着んだよ?」と逆に問われてしまった。
「は、温和?」
なに言ってるの?のつもりでつぶやいた声に、「俺は女装の趣味なんてねぇよ」と不機嫌な声が応じる。
いや、そんなこと、分かってます。
分かってますし、あのサイズはどう見たって温和向きではありません。
でもだからと言って――。
「きょ、今日は温和の誕生日、だよ?」
プレゼントを渡すのは音芽であって、温和ではないはずだ。
(なのに何この状況……。意味分かんないっ!)
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