3.今日は温和の誕生日だよ?

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 そう言えばゴタゴタに紛れて、せっかく綺麗にラッピングした、温和(はるまさ)へのプレゼント用マグカップを部屋に置き去りにしてきてしまったことを思い出した音芽(おとめ)である。 「あ、の、温和(はるまさ)。私、一旦部屋に戻ってきて……いい? 忘れもの……しちゃって」 (あっちに行って、ひとりになってから、いま一度状況の把握に努めて参りますっ)  心の中でビシッと敬礼してそう付け加えながら温和(はるまさ)を見上げた音芽だったけれど。 「音芽、俺との約束、忘れたのか?」  不意に身を(かが)めた温和(はるまさ)に、耳元、低めた声音で(ささや)かれて、音芽はたまらずビクッと身体を揺らした。  ――お前はただ俺のそばにいてくれりゃーいい。  過日お強請(ねだ)りされた、温和(はるまさ)からの誕生日の要求を思い出した音芽は、 「わ、忘れてな、んか……」  温和(はるまさ)の声音とともに耳朶を掠めた吐息に、思わず耳を押さえて真っ赤になりながらしどろもどろでつぶやく。 「だったら、部屋には戻るな」  わかったな?と再度鼓膜を直接揺らすような距離で念押しをされた音芽は、一生懸命コクコクとうなずいた。
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