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「だったら下着、要らなくね?」
――どうせ脱がすんだし。
そんな言葉が聞こえてきそうなあっけらかんとした温和の声音に、音芽は思わずフリーズする。
音芽の目論見では、今のセリフで諦めてくれるか、最悪でも「だったら下着取り替えに戻ってこいよ」となる予定だったのだ。
なのに何で?
「あ……、で、でもっ」
困惑に、眉根を寄せる音芽に、
「これさ、結構布地厚いし胸んところもたくさん刺繍入ってんじゃん。ノーブラでも問題ねえだろ」
乳首が透けて見えなきゃいいわけだろ?みたいな言い草に、音芽はグッと言葉に詰まる。
(バカ温和っ!)
思いながら温和を睨んでみた音芽だったけれど、いっかな意に介した風はなく、「ん?」と見つめ返された。
「今日は俺の誕生日なんだけど――?」
挙げ句の果て、そんな風に脅迫されてしまっては、音芽は観念するしかない。
寄せて上げて、が出来ない分、絶対襟元から覗く胸の谷間に支障が出ると思うのに、男である温和にそこまで赤裸々に訴えるのは恥ずかしいことだ。
「わかり、ました……」
結局、温和から強気に出られると嫌と言えない音芽は、渋々うなずいてドレスを手にすると、温和の要求通り脱衣所に引っ込んだ。
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