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「女の子ってさ、人形遊びをするとき、服とか着替えさせるんだろ?」
音芽が答えられないのを知っているくせに、まるで問いかけるようにそう言いながら、温和がドレスの背面にあるファスナーに手を掛ける。
思わずその気配に音芽がギュッと縮こまるのへ、「じっと、な?」と再度言葉で呪縛し直した温和は、この上なく上機嫌だ。
「一度さ、お前とこういうプレイ、してみたかったんだよな、俺」
ククッと笑うと、一生懸命動くまいと頑張っている音芽に「嫌か?」と問いかける。
音芽は「嫌じゃない」と答えたくてもそれを伝える術が与えられていなくて、そのことがすごくもどかしいみたいに温和をじっと見つめ続けた。
「音芽、俺はどこまでならお前に許されるのか、たまに物凄く暴走したくなっちまうんだ」
それで音芽からの愛を推し測ろうとでもしているのだと言いたげな口調の温和に、音芽は「貴方になら何をされても許すのに」と応えたいのに言えなくて。
「お前が本当に嫌ならさ、命令違反しても俺、許すから」
小さく耳元で落とされた言葉に、音芽は「嫌じゃない」と伝えたくて、頑なに動かない人形を演じ続ける。
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