教えて欲しいことがあるの

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教えて欲しいことがあるの

『お兄ちゃん、教えて欲しいことがあるの。時間ができたら電話ください』  午前中の診察を終えてかなり遅い昼休み。  ふとロッカーに仕舞い込んでいた携帯を取り出してみると、2つ下の妹から、そんなメッセージが入っていた。  別に夜でも構うまいに、わざわざこんな連絡を真っ昼間に寄越すってことは、温和(亭主)に聞かれたくない内容ってことか?  そう思いながら、もう一度文面に視線を落とした俺は、何となく口の端がやんわりとほころびそうになる。  幼なじみの温和(ハル)と結婚してからこっち、妹の音芽(おとめ)は俺のことを「カナ(にい)」ではなく「お兄ちゃん」と呼ぶことが増えた。  それは俺がずっと妹から呼ばれたいと思っていた呼び名に他ならなかったから。  そう呼んでくれることを、俺は結構嬉しく感じていたりする。  が、それは同時にアイツにとって、もうひとりの兄貴的存在だった温和(はるまさ)が、兄ではなくなったことも意味しているんだと思うと、少し複雑な気持ちもするんだ。  俺にとっちゃ、たった1人の可愛い妹だからな。  まぁ「お兄ちゃん」としては色々複雑なわけよ。
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