兄としての役割

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*** 『奏芽(かなめ)、あのメッセージ、何だよ?』  律儀に22時を過ぎてすぐ、温和(はるまさ)から電話がかかってきた。  そんなハルだ。わざわざ確認しなくても、近くに音芽(おとめ)はいないだろう。  俺はその電話を受けるとすぐ、すかさず用件を切り出した。 「お前なぁ、音芽(おとめ)の妊娠中くらい自粛しろよ」  それだけで俺が何を言いたいのか察したらしいハルが、小さく息を呑む気配がする。 『……音芽から何か聞いたのか?』  ややして探るみたいに紡がれた言葉に、 「バーカ。アイツがそんなんに言うわけねえだろ。――ただ」  診察のことで心配事があるみたいだったと告げたら、温和(はるまさ)が電話口で小さく吐息を落とす。 「ハルのことだからキスマークでも付けたんだろ。けど……あんま胸の辺りは触ってやるなよ。下手したら子宮収縮させて早産の危険性があるぞ?」  陣痛を促進するのに、乳首をマッサージしたりするくらいだ。  妊婦の乳はあんまり触るもんじゃねぇ。  極力対象が妹だとは考えないよう気をつけながら、医者の顔をしてそう言ったら『先は触ってねぇよ』とか。  いや、だから俺にそこまでバラさなくていいって。  兄としてはね、あんま妹のそういうの、知りたくねぇのよ。  今回はまぁ、不可抗力で諦めるとしても、だよ。
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