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『奏芽、あのメッセージ、何だよ?』
律儀に22時を過ぎてすぐ、温和から電話がかかってきた。
そんなハルだ。わざわざ確認しなくても、近くに音芽はいないだろう。
俺はその電話を受けるとすぐ、すかさず用件を切り出した。
「お前なぁ、音芽の妊娠中くらい自粛しろよ」
それだけで俺が何を言いたいのか察したらしいハルが、小さく息を呑む気配がする。
『……音芽から何か聞いたのか?』
ややして探るみたいに紡がれた言葉に、
「バーカ。アイツがそんなんあからさまに言うわけねえだろ。――ただ」
診察のことで心配事があるみたいだったと告げたら、温和が電話口で小さく吐息を落とす。
「ハルのことだからキスマークでも付けたんだろ。けど……あんま胸の辺りは触ってやるなよ。下手したら子宮収縮させて早産の危険性があるぞ?」
陣痛を促進するのに、乳首をマッサージしたりするくらいだ。
妊婦の乳はあんまり触るもんじゃねぇ。
極力対象が妹だとは考えないよう気をつけながら、医者の顔をしてそう言ったら『先は触ってねぇよ』とか。
いや、だから俺にそこまでバラさなくていいって。
兄としてはね、あんま妹のそういうの、知りたくねぇのよ。
今回はまぁ、不可抗力で諦めるとしても、だよ。
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