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「ふ、……ぁっ」
やっと温和の執拗なまでの責めから解放されて、音芽は肩で喘ぐように息をして。
そのまま温和にもたれ掛かるように抱き止められたまま、呼吸を整えていたけれど、ポンッと軽い電子音とともに扉が開いて、思わずビクッと身体を跳ねさせた。
幸い最上階に着いただけで、人が乗ってくることはなかったのだけれど、もしかしたら扉が開いた先で誰かがエレベーター待ちをしていたかもしれないのだ。
――もうっ、温和ったら何でこんなっ!
エレベーター内での濃厚なキスを思い出して、ぶわりと頬に熱が昇った音芽は、箱を降りるなり思わず立ち止まってしまう。
「何思い出したの、音芽ちゃん。エッロい顔……」
立ち尽くしてしまった音芽のすぐ耳元で。
温和が吐息を吹き込むみたいに意地悪くささやいてきて、音芽は耳を押さえてキッと温和を睨みつけた。
「温和の……、バカっ」
「人、いなかったんだから問題ねぇだろ」
そう言われてもそんなのは結果論。羞恥心が拭い切れない音芽は納得がいかないらしい。
ぷぅっと頬を膨らませたまま温和の方を見ようとしなかった。
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