スタ特①『不機嫌な彼と、鈍感な彼女』

2/4
前へ
/698ページ
次へ
 仕事で温和(はるまさ)と二人で県外に研修会に出た帰り道。  事故があったみたいで、道路が大渋滞。うそみたいにべったりと車が動かなくなってしまった。  窓の外は梅雨らしくシトシトと雨が降っていて、車内にはワイパーの音だけが定期的に聞こえている。  アイドリングストップ機能搭載の車って、停車中はエンジンが止まるからエアコンも切れちゃうんだ。  何となく曇り始めた窓ガラスを見つめて、ぼんやりとそんなことを思う。  あまり曇ったら運転に支障が出ちゃうかな。  窓少し開けたら違うかな。  そう思ってパワーウインドウのスイッチを押して、ほんの少し車外から空気を取り込む。  そうしながら、ハンドルを握る温和(はるまさ)の横顔をチラチラと盗み見て、やっぱり温和(はるまさ)、かっこいいなぁと思ったのは内緒。  あーん。でも……ダメ。  慣れない場所で一生懸命小難しい話を聞かされたからかな、段々眠くなってきちゃった。  だからって、運転してくれている温和(はるまさ)を置いて、私だけ助手席で気持ちよく眠るわけにはいかない。  一生懸命あくびを噛み殺しながら、眠気と闘いつつも、思いを巡らせる。  どうやったら眠らずに済むかしら。  出来れば、温和(はるまさ)も退屈しなくて済むような何か。  そこで私はふと(ひらめ)いたの。
/698ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3101人が本棚に入れています
本棚に追加