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【Side:Kaname Torikai】
俺にはふたつ年下の妹がいる。
俺によく似たかわいい妹。
名前はピアノ教室の先生をしていた母親の独断で、俺とシリーズみたいな、音芽というのを付けられている。
それがまた、こいつは俺の妹なんだと実感できて、結構気に入っていたりする。
「奏芽、お前、音芽のこと、どう思ってる?」
そう俺に聞いてきたのは隣に住む幼なじみの温和だ。
オギャー!とこの世に生を受けたのとほぼ同時、同じ病院の同じ新生児室に入れられた俺たちは、誕生日も一緒、おまけに家も隣同士の双子みたいな存在だ。
そんなだから妹もこいつと共有するみたいになっちまって、俺はちょっぴり不満だったりする。
音芽の兄貴は俺なのに、アイツ、俺のことは「カナ兄」、ハルのことは「ハル兄」とか呼んで区別しやがんの。
単純にハルのことは「ハル」でよくねぇか?と俺は提案したい。
俺がかたくなに音芽の前で温和のことを「ハル」と呼び続けているのも、「音芽もそう呼べよ」という意思表示なんだが、なかなか通じないもので。
ま、アイツ鈍感だからな。
おい、分かってんのか? お前の兄貴は俺だけだぞ、音芽。
幼い頃から愛する妹をいじめるのは得意だったくせに、何故かそれだけは言えなかった言葉。
「どうって……妹以外の何もんでもねぇだろ?」
苦笑まじりに答えながら、分かりやすい男だな、と思ったりする。
好きなら好きってサッサと言えばいいのに何をグダグダしてんだよ?
ずっとそばで見ていたら完璧に相思相愛だって分かるのに、何だって俺の幼なじみと妹はこんなに焦ったいのかね?
常々そんな風に思っていたわけだが――。
どうやら最近やっと! 音芽と温和は、恋仲になったようで。
お兄ちゃんとしてはやや複雑な心境だけど、まぁハルになら俺の可愛い妹を任せてやってもいい。
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