スタ特②『「お兄ちゃん」でよくないか?』

3/3
前へ
/698ページ
次へ
 先日温和(はるまさ)に、「俺は音芽(おとめ)の兄貴でいるつもりなんてねぇのに」ってぼやかれて、おや?と思った。  音芽に「お兄ちゃん」と呼ばれたい俺と、「お兄ちゃん」と呼ばれたくない温和(はるまさ)。  完全に利害の一致じゃねぇか。 「だったらさ、ハル(にい)って呼ばれるたびにお仕置きしてやればいいんじゃね?」  俺は自分の気持ちを明かさないまま、幼なじみを自分に都合のいいように焚きつける。  これで音芽がハルのことを「ハル(にい)」って呼ばなくなったら、俺は晴れてアイツのたった一人の「お兄ちゃん」だ。  そう思ったんだけどな。  何でアイツ、ハルのこと「温和(はるまさ)」って呼ぶようになった今でも、俺のこと「カナ(にい)」って呼び続けてるんだろうね?  鈍感な妹だから、やっぱガツンと言ってやるしかねぇのかな。    お前の兄貴は俺しかいねぇんだから、呼び分ける必要なんてねぇだろ? 単純に「お兄ちゃん」でよくないか?ってな。  音芽が俺のことを「カナ(にい)」って呼んでる間は、きっと心の奥底では温和(はるまさ)のことも兄貴(ハル兄)だと思ってる証拠だと思うんだ。  なぁ、ハル。  お前はそのことに気付いているか?       END(2020/06/11)
/698ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3102人が本棚に入れています
本棚に追加