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「お待たせしました」
温和に、LINEで鶴見先生に送っていただくことになった旨のメッセージを入れると、私はスマホをバッグに仕舞った。
それから鞄を肩に提げて、――後悔する。
( 荷物、リュックに入れて来ればよかったぁー)
持ち手が長めの帆布製のショルダーバッグ。今朝は温和が持ってくれていたからこんなに歩くのに邪魔だとは思わなかった。
物伝いに歩くたびに肩に掛けた鞄が前に踊り出てきて、本当に邪魔で。
私は荷物をエイッ!と放り投げたくなる衝動を必死に堪えながら、鶴見先生のほうを目指す。
「あ、荷物、持ちますよ」
言われて肩から厄介な重みがふっとなくなった瞬間、口では「でも悪いですっ」と言いながらも、内心ホッとしたことは否めない。
そんな私に、朝は断られましたけど――、と前置きをしてから、鶴見先生が私をじっと見つめていらして。
おもむろに「僕の腕に掴まってください」とおっしゃった。
あ、でも……でも……。それはやっぱり恋人みたいに見えそうで困る……。
そんなことを思って、思わず立ち止まって逡巡していたら「ほら、朝、霧島先生にもしてらしたじゃないですか。僕でも一緒のことですよ? さあ遠慮しない!」と畳み掛けられてしまった。
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