特典④『雨とピアノとハムスター』

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 そういえばそんなに苦手なら両親に断って、奏芽(かなめ)に頼ませればよかっただろうに、と思った俺だったが、その兄も小児科医だったことを思い出して「ああ」とひとり納得した。  しかし奏芽(かなめ)も近場にいないとなると――。  音芽(おとめ)の実家に泊まっても、邪魔が入ることを気にせず、ふたりの時間が過ごせるのかもしれない。  ただひとつ問題があるとすれば――。 「音芽、ひとつだけ条件がある」  俺がふと思い出したようにそう声をかけたら、音芽がかしこまったように背筋をぴんと伸ばした。 「な、何でしょう?」  飲める条件でなかったら困る、と顔に書いてあるのを見て、思わず笑ってしまう。 「大したことじゃねぇよ。俺の親(となり)には俺が来てること、悟られないようにすること」  言ったら、一瞬キョトンとした顔をして、「ぜ、善処します!」  音芽(おとめ)がピッと愛らしく敬礼をしてみせた。  よし、仕込みは上々だ。    幼い頃から見知ったあの部屋で音芽を抱いたらどうなるんだろう?  ふとそんな淫らな妄想をしてしまって、俺はごくりと生唾を飲み込んだ。  ふたりのお袋さんが、かつてはピアノ教室の先生をやっていたという音芽ん()には、ピアノのある部屋があって、そこは完全防音仕様だ。  あの部屋でなら、思い切り彼女を()かせても問題ないはずだ。
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