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追い討ちを掛けるように濡れそぼったままの身体をギュッと抱きしめて、冷たく冷えた耳にかかる、水滴を滴らせる髪の毛をかき分けると、甘えた声を注ぎ込む。
「ダメ……?」
なぁ音芽。俺がこんな声を聞かせるのはお前だけなんだからな? 分かれよ。
「ひゃっ、……だ、ダメっ!」
なのになんでそれを無下にするかね?
俺の声にゾクッと身体を震わせながら、音芽が俺の申し出を却下するのへ、悪いけど聞く気ねぇからと内心思いつつ、一応理由だけは聞いてやるかと
「なんで?」
と問いかけたら「お、お風呂入って、ない、からっ」とか今更だろ。
「汗とか……かいてるかもしれないし……こ、このままは恥ずかしい……」
ギュッと身体を固くして心底困ったように言うのが可愛くて、「俺のにおい、嫌いか?」と問い掛けたら、音芽が慌てたようにフルフルと首を横に振った。
「嫌いなわけ、ないっ。むしろ……大好き……です」
賢明に否定してくれたばかりか、ゴニョゴニョと小声で可愛い告白まで付け加えてくれるのへ、ホント馬鹿正直で御し易いな、とか思ってしまう。
「俺も同じ、なんだけど?」
耳朶に声を吹き込むついでにうなじに顔を埋めて細い首筋に舌を這わせる。
「むしろ、さ。雨に濡れてお前の匂いが薄れてて残念に思ってるくらい」
言いながら、許可も取らずに音芽のブラウスのボタンをひとつずつ外していく。
それに気付いた音芽が慌てたように俺の手を掴んだけれどお構いなしだ。
「な? このまま、抱かせろよ」
言って、くつろげたばかりの胸元へ冷えた指先を潜り込ませる。
音芽の肌も俺の手に負けず劣らず冷え切っていて、このままじゃホント、風邪をひきそうだなと思う。
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