3103人が本棚に入れています
本棚に追加
「けどさ、音芽。俺に弾いてくれるのって駆け引きとは違うんじゃね?」
そう聞いてみたら、音芽が一瞬息を飲んでから、照れたように笑う。
「温和に聴かせるのが、私にとっては一番の駆け引きなんだけどな?」
その笑顔に、俺はドキドキしてしまう。
やっぱり何をしていても、俺の彼女は凶悪に可愛くて、最上級に色っぽい。
「なぁ、弾いてくれなくてもいいから……ひとつだけ聞かせてくれ」
ふと思い出して俺がそう言ったら、音芽が「ん?」と首を傾げる。
「さっきの曲、さ。めっちゃ古い洋楽じゃん? 何であれ弾こうと思ったの?」
「え? 『I Do It For You』のこと?」
音芽が問うてくるのへ、静かにうなずく。
俺がじっと音芽を見つめたら、音芽がもじもじと恥ずかしそうに身をよじって。
俺は「ん?」と思う。
「俺が好きな曲だって知ってた……りした?」
恐る恐る尋ねると「え?」って驚いた顔をされた。
わ、外したか。ちょっと恥ずかしいな。
そう思った俺に、「温和がね、その……トラウマで色々忘れてた私のためにあれこれしてくれてたでしょ?」
音芽が意を決したようにポツンポツンと語り始める。
「あー、あれ、な。まぁ俺が勝手にやったことだからお前が気にする必要ないんだからな?」
改めてそう言ったら、「うん。前にもそう言ってくれたよね。それ聞いた時にね。……っていうか真実が全部わかった時にね、私、温和とこの曲の歌詞がリンクして感じられてドキッとしたの」
最初のコメントを投稿しよう!