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episode1:ここで抱いても構わないか?
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俺を想ってピアノを弾いていた自分を指して、「恥ずかしいでしょっ?」って真っ赤になる音芽が愛しくてたまらなくて、俺は彼女の手を取って椅子から立ち上がらせると、ギュッと抱きしめた。
そのつもりはなかったけれど、抱きしめた瞬間に俺の身体が鍵盤の右端に当たったらしく、ピン!とおもちゃのピアノみたいな高音が鳴った。
その音に2人して顔を見合わせてから、なんだかおかしくなって笑い合う。
***
腕の中に閉じ込めた音芽の身体から、ふわりとボディソープの香りが立ちのぼる。
俺と同じものを使ったはずなのに、音芽から漂うそれは、彼女の体臭と混ざったからか、とても甘く感じられて。
「音芽……」
音芽の小さな耳朶に指で優しく触れながら名前を呼んだら、ほんのりと情欲を乗せた潤んだ瞳で見つめ返された。
「ここで抱いても構わないか?」
防音室で心置きなくお前を啼かせてみたいと言ったら、音芽はどんな反応をするだろう。
期待を込めて音芽を見つめたら「……嫌だって言っても……するんでしょう?」と拗ねたような顔をされた。
「さすが音芽。分かってんじゃん」
そんな音芽にニヤリと笑って見せると、「温和の……エッチ」って小声で言われて目を伏せられた。
「お前が欲しくてたまらないエッチな俺は、嫌い?」
その顔を上向けるようにして音芽の揺れる黒瞳を覗き込んだら「き、嫌いじゃ……ないです」とか本当こいつ、なんでこんなに可愛いんだよ!
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