3103人が本棚に入れています
本棚に追加
***
この部屋の中にはグランドピアノと、それを弾くための椅子、壁際の一角を占拠する楽譜棚、ピアノ横に手すり付きの藤椅子が置かれているだけだ。
部屋自体も8畳程度のそんなに広くない空間で。
当然寝そべったりすることは想定されていない部屋だから、そういうことをするには不向きだと思う。
でも、制約があるからこそ燃えるってのもあんだろ?
「あ、あのね……温和。その……ピアノには……」
音芽が俺を見つめて恐る恐る言うのへ無言でうなずいて、鍵盤蓋をそっと閉める。
行為の時、ピアノには近づきたくないってことだよな。
シチュエーション的には鍵盤に手をかけた音芽を後ろから、とかかなりそそられるけど、ダメってことか。――残念。
となると――。
「音芽、ここに後ろ向いて膝立ち、な?」
風呂上り。
膝丈の、光沢ある淡いピンクのシャツワンピースを着ている音芽に、ラタンチェアを指さしてそう指示を出したら、真っ赤な顔をしてうつむいた。
「背もたれに手ぇついて、お尻は俺の方な?」
戸惑う音芽の手を引いて、急かすように椅子上に追い立てると、俺に背中を向けるように座面に膝立ちさせる。
座面にはフワフワのクッションがついているので痛くはないはずだ。
最初のコメントを投稿しよう!