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「――聞いて、ますか？」
グッと身体を支える彼の手指に力が込められて、私はそこに温和の苛つきを垣間見る。
でもね、私だって温和以上にモヤモヤしてるのよ？
「……聞きたく、ないですっ」
気がつくと、私は温和に反抗するようにそう吐き出してしまっていた。
「は……？」
温和が、私の言葉が信じられないと言う風に聞き返して来るのへ、
「終業後に私がどう動こうと、霧島先生には関係ないはずです。――助けていただいて有難うございました。あの、私達もう帰りますので……腕、離していただけますか？」
温和の手を振り払うようにして、私は鶴見先生に視線を移す。
「すみません、鶴見先生。お待たせしました。――帰りましょう？」
言って、鶴見先生に手を伸ばすと、彼は温和を気にしつつも、私の手を取ってくれた。
「じゃあ、お先に失礼します。――逢地先生にもよろしくお伝えください」
視界の先、私たちの様子を遠巻きに茫然と見つめておられる逢地先生に軽く会釈をすると、私は鶴見先生と一緒にその場を後にした。
（足が自由だったなら――。誰にも頼らず走って帰るのに！）
そう、思いながら。
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