スタ特⑥『Eight years later』

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 夏休みに入って、非常勤の私は児童らの不在に合わせてこんな風にのんびりお休みに入っていたりするけれど、温和(はるまさ)たち正規雇用の先生方はそういうわけにはいかない。  夏休みだって、職員作業や2学期の準備などなど、日頃児童らがいたのではなかなか出来ない雑事などをこなすために、お休みなんてしている暇はないの。  今朝も、大好きな温和(はるまさ)はお留守番の私と和音(かずね)のおでこに各々「行ってきます」のキスをして、ひとり夏の日差しの中へ出勤して行った。  結婚前に温和(はるまさ)とふたり、隣り合わせで住んでいたアパートよりも、今の家――温和(はるまさ)たっての希望で建てた、2階建ての一軒家――は小学校(職場)から離れている。  そのぶんお互いの実家があるマンションには徒歩で数分圏内の距離になった。  通勤に車で片道30分は、そんなに遠いほうではないよと温和(はるまさ)は笑うけれど、歩いて通えなさそうな時点で、未だペーパードライバーの私にとってはかなり遠いのです。  多分温和(はるまさ)、私が実家に気安く行けるようにと、ここに居を構えてくれたんだろうなぁ、と思いつつ。 ***  何年経っても温和(はるまさ)は本当にカッコよくて……今春に34歳になったはずだけれど、衰えるどころか、逆に大人の男性の色香が増した様に思うの。  私が一緒にいない間、他の女性たちから言い寄られたりしないかな?って不安は尽きないけれど、そこはもう信じて待つしかない。
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