スタ特⑥『Eight years later』

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 結婚して8年。子供を産んで所帯染みてしまった私のことを、それでも温和(はるまさ)は「俺の音芽(おとめ)が誰よりも1番可愛い」って言ってくれるの。  昔はあんなにひねくれ者で照れ屋だったのに、年の功かな?  ここ数年の温和(はるまさ)は、私が恥ずかしくなるくらい結構ストレートに愛の言葉をささやいてくれます。  その、熱に浮かされたような瞳と、毎晩和音(かずね)が寝静まった後を見計らったように求められる身体。ふたりきりの寝室でつむがれる甘い甘い夫婦の営みに、私は温和(はるまさ)に愛されていると実感させられる。  それに――。  時折養護教諭のなっちゃんから私が不在の間の温和(はるまさ)の様子が送られてくるのも大きいの。  それがあるから安心していられるというか。  なっちゃんからは「心配しなくても霧島(きりしま)先生はオトちゃんしか見えてないし、大丈夫だよ」ってしょっちゅう言われてしまう。  そういうなっちゃんだって、6年前に入籍を済ませた鶴見(つるみ)先生とのことになると、途端心配性の虫になるのだけれど。  鶴見先生は昔、他者の愛し方が分からないって私と温和(はるまさ)に話してくれたことがある。けれど……不器用な愛し方だとしても、なっちゃんのことはとても大切にしていると思うの。  ただひとつ問題があるとすれば――。
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