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もちろん、なっちゃん側のご両親は健在なわけで……そちらを頼ると言う選択肢は残されてはいるのだけれど、自分の親族を信じきれない鶴見先生にはそれもハードルが高いんだろうな。
「大我さんがね、自分たちの子供は学校の児童らだからって言うの」
なっちゃんが、ほぅっと吐息を漏らすように言った声が、今でも耳の奥にこびりついている。
鶴見先生となっちゃん、ちゃんとそう言うところ、もっともっとお互いに話し合えたらいいんだろうけど。
***
物思いにふけっていた私は、「ママ?」という和音の声に、ハッとする。
「聞いてる? この子なんだけど――」
和音の小さな指が、小1の頃の温和の横に立つ、黒髪の男の子を指し示す。
「あー、うん、そう。それ、奏芽お兄ちゃんだよ?」
幼くても、どう見てもお兄ちゃんの顔なんだけどな?と不思議に思う私に、
「でも髪の色、金色じゃない」
って和音が唇をツン、と突き出した。
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