スタ特⑥『Eight years later』

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 もちろん、なっちゃん側のご両親は健在なわけで……そちらを頼ると言う選択肢は残されてはいるのだけれど、自分の親族を信じきれない鶴見(つるみ)先生にはそれもハードルが高いんだろうな。 「大我(たいが)さんがね、自分たちの子供は学校の児童らだからって言うの」  なっちゃんが、ほぅっと吐息を漏らすように言った声が、今でも耳の奥にこびりついている。  鶴見先生となっちゃん、ちゃんとそう言うところ、もっともっとお互いに話し合えたらいいんだろうけど。 ***  物思いにふけっていた私は、「ママ?」という和音(かずね)の声に、ハッとする。 「聞いてる? この子なんだけど――」  和音の小さな指が、小1の頃の温和(はるまさ)の横に立つ、黒髪の男の子を指し示す。 「あー、うん、そう。それ、奏芽(かなめ)お兄ちゃんだよ?」  幼くても、どう見てもお兄ちゃんの顔なんだけどな?と不思議に思う私に、 「でも髪の色、金色じゃない」  って和音(かずね)が唇をツン、と突き出した。
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