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「あ、これ……」
和音に呼ばれて覗き込んだアルバムのなかに懐かしい1枚を見つけた私は、思わず冊子を手に取っていた。
写真のなかで、泥水に濡れそぼった私が大泣きをしていて、同じぐらい汚れた姿の温和が、オロオロとした様子でなぐさめていた。
そして同じフレーム内、1人わりと綺麗な姿で涼しげに澄ましたお兄ちゃんが、数歩引いたところからそんな私たちを眺めているの。
私がちょうど和音ぐらいの時の写真だ。
ということは温和とお兄ちゃんは8歳――小学2年生あたりかな?
服装はお兄ちゃんが黒のタンクトップにジーンズ素材のハーフパンツ。温和が白のTシャツに7分丈のツイルパンツ。私がパフスリーブのTシャツに、裾にレースがあしらわれたジーンズ素材の短パンで。
雨なんて降っていない、からりとした晴天をバックに、みんな足元は泥だらけの長靴。
前述のように私は下半身を中心に泥水にまみれていて、温和は上半身がそんな感じ。お兄ちゃんも少しは汚れて入るけれど、私たちほどではなくて――。
このちぐはぐな服装と汚れ方の差。
兄たち2人の“溝”探検に、無理を言ってついて行った時の写真に違いない。
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