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大泣きしながら帰ってきた私を、お母さんが慰めてくれたのは覚えている。
その後みんなでお風呂に入ったことも。
でも写真に撮ってたなんて……。
小学生になってこの写真を見た時、薄情なお母さんだと恨めしく思ったのを覚えている。
でも和音を産んでから、私も何となくその時の母の気持ちが分かるようになった。
とにかく“残したい”のだ。
可愛い我が子の姿を。
笑っているときはもちろん、泣いている顔も、眠っている顔も、地団駄を踏んで怒っている顔でさえも、みんなみんな可愛くて大切な我が子のかけがえのない瞬間だから。
「ママ、何でこのとき泣いてるの?」
私の視線に気づいた和音が、手元を覗き込むように件の写真を指差して問いかけてくる。
やっぱり、気になるよね。
これ、確かお兄ちゃんたちとほんの少し水の流れる溝を、奏芽兄を先頭に、温和をしんがりにして、3人で一列になって長靴でじゃぶじゃぶ歩いた時の1枚で――。
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