スタ特⑥『Eight years later』

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--------------------- episode2『兄のお陰で、兄のせい』 ---------------------  毎月月末頃になると、お兄ちゃんからメッセージが届く。  来月はこの日とこの日なら大丈夫、的なメッセージ。  何が大丈夫かって言うとね、和音(かずね)を預かれるぞって意味なわけで。  基本的に木曜と日曜・祝日はお休みの『鳥飼(とりかい)小児科医院』なので、お兄ちゃんの「大丈夫」の日も、大体そのあたりに集中しています。 *** 「ね、温和(はるまさ)、来月はココとココならOKだってお兄ちゃんが」  仕事から帰ってきた温和(はるまさ)の荷物を受け取りながら、8月のカレンダーを指差したら、「じゃあさ、折角だし8日に頼もうか?」って言葉とともに、頬に軽くキスを落とされた。  8月8日――。  まさに結婚記念日当日だ。  今回で8回目。  8ばかり並んでいて、何だか末広がりの予感!  温和(はるまさ)からのキスに、となりながらそんな取り止めのないことを考える私を横目に、 「あー、ママだけずるい! 和音(かずね)も! 和音(かずね)も!」  温和(パパ)から私へのキスに気付いた和音(かずね)が、父親の足にギュッとしがみ付いて、自分のほっぺを人差し指でつついた。 「和音(かずね)、来月も奏芽(かなめ)ん所で留守番できるか?」  温和(はるまさ)が、そう言いながらしゃがみ込んで、和音(かずね)の柔らかな頬にキスを落とす。それを見て、ヤキモチを妬いたりせず、微笑ましく思えるくらいには、私、ちゃんとお母さんができています。  温和(はるまさ)は本当にとびきり素敵な夫で、とっても素敵なお父さんだ。  結婚して8年になるけれど、私、1日だって彼にときめかない日はないの。
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