スタ特⑥『Eight years later』

15/36
前へ
/698ページ
次へ
「もちろん! 何ならお泊りだって!」  和音(かずね)がにっこり笑うのを見て、温和(はるまさ)が即座に「泊りはダメだ」って却下をする。  そんな、子供が言うことを真に受けなくても……。  そう思いながらも、温和(はるまさ)も、娘のお兄ちゃんへの気持ちに気付いているんだろうなぁと思った。 ***  温和(はるまさ)和音(かずね)の前だと、ふたりきりの時ほどくっ付いてはこない。でも、だからと言って決して私を邪険にしたりもしないの。 「和音(かずね)もとってもとっても大事なパパの娘だよ。でもね、俺にとって、ダントツの一番はいつだってママなんだ」  恥ずかしげもなく和音(かずね)にそんなことを言って、「だから俺の音芽(おとめ)を泣かせたりしたら、例え和音(かずね)でもパパ、許さないよ?」とか……恥ずかしいのでやめてください。  最初は子供相手に何を大人げのないことを、って思っていたのだけれど、どうやらこの「ママ至上主義宣言」、当の和音(かずね)には割と受け入れやすかったみたいで。   気が付いたら、「和音(かずね)もパパみたいな人と結婚したい!」って言うようになっていた。  和音(かずね)が言う、この「パパみたいな人」っていうのは、別に「パパと結婚したいっていう意味」じゃないんだと気が付いたのは、いつのことだっただろう。  彼女の言う「パパのような人」は、「和音(かずね)のことを一番だと言ってくれる人」みたい――。
/698ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3102人が本棚に入れています
本棚に追加