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「奏芽がみてる女の子たちの中で、和音がダントツで一番可愛いよってっ! 和音も奏芽が一番かっこいいと思ってるし! ねぇママ、これってうんめーでしょう!?」
ちょっ、お兄ちゃん、何言ってくれてるの!
***
その日の夜――。
私はお兄ちゃんの仕事が終わった頃――和音が温和とお風呂に入っている隙に兄に電話をかけた。
コール数回で『どした? 珍しいじゃん、お前から俺に電話とか』って呆気らかんとした声音でお兄ちゃんが応答する。
「用がなきゃかけないわよっ。お兄ちゃん、お願いだから和音に気を持たせるようなこと、言わないで!」
温和も和音もそんなに長湯をする方じゃない。
単刀直入にズバッ!と用件を切り出したら『は? なんだよ、それ』って低温ボイスが返る。
お兄ちゃんの声、妹の私が聞いてもこんなふうに電話だとゾクッとくるいい声で、私はあまりお兄ちゃんと電話で話すのが得意ではない。
一瞬お兄ちゃんのいい声にひるみそうになって、ブンブンと首を振ってリセットする。
首を振ったらおさげが頬にペチンと当たって、背筋がビシッと伸びる気がした。
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