オトメは温和に愛されたい

スタ特⑥『Eight years later』

「和音(かずね)に、“お兄ちゃんがみてる女の子たちの中で、あの子がダントツで一番可愛い”とか言わなかった？」

　聞いたら電話口で一瞬間があって、『ああ、そういやそんなこと言ったかも知んねぇな』とかっ！

「和音(かずね)から、運命の人の話の流れでそういうこと言われたって聞いたんだけど！？」

　思わず声が大きくなってしまって、慌ててボリュームを落とす。

　いくらお風呂に入ってるって言っても、あまり興奮したら２人に声が聞こえてしまうかも知れない。

　冷静にならなきゃダメよ、音芽(おとめ)……。

　自分に言い聞かせるようにそう心の中でつぶやいて、お兄ちゃんの返事を待つ。

『運命の人云々(うんぬん)の話は終わったと思ったんだってば。まさか続いてるとか思わねぇだろ。その話があって５分以上経ってからだったんだぜ？　和音(かずね)は可愛いか？って聞かれたの』

　５分以上。
　多分それ、運命の人について和音(かずね)なりに“ああでもない、こうでもない”って考えてたんじゃないかな。
　あの子、そういうところあるから。
　熟考型というか。