3102人が本棚に入れています
本棚に追加
『だからさ、俺が診てる女の子たちの中じゃダントツでお前が可愛いよって言っただけだってば。――ほら、和音ってさ、俺たち兄妹に似てんじゃん? うちの患者のなかでもぶっちぎりで美人なのは言うまでもねぇだろ? ま、身内の欲目だけど』
とか――。
ナルシストですか!
確かに和音はお兄ちゃんにも似ているけれど……それはまぁ、血の繋がりがあるんだから仕方ないでしょ。
私としてはもっと温和に似てくれた方が嬉しかったんだけど、あの子が温和から引き継いだのは指の形と目元だけで。
私と違って和音の目元はキリッとしたシャープな印象の二重で、それはまぎれもなく温和から遺伝したところなんだけど……。
そこ、お兄ちゃん似だと言われたらそう見えなくもない感じなのが困りどころでもあるの。
よく見たら目尻の感じとか……お兄ちゃんの目元とは違って少し優しげで、やはり温和からの遺伝に違いないって分かるんだけど……基本的なパーツが兄と似ている私から、だから……。
下手すると私よりお兄ちゃんに似てる気がするときすらあるの。
実際お兄ちゃんはよく和音の父親に間違われたりするみたい。
お兄ちゃんにはその自覚、あまりないんだけど……和音は知らない人から「パパとお出かけいいわね〜」とか話しかけられてムッとするのだと話してくれるから……多分そうなんだと思うの。
「奏芽、私のパパじゃないのにっ!」
プンスカと小さな唇を突き出す可愛らしい娘の顔を思い出して、私は小さく吐息を落とす。
最初のコメントを投稿しよう!