スタ特⑥『Eight years later』

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 お兄ちゃん、私が子供の頃は散々「音芽(おとめ)は不細工だ」ってひねくれた意地悪をしてきたことを思えば、素直に姪っ子のことを「可愛い」と褒めてくれるのは喜ばしいことなのかも知れない。  知れないけど……! 「ねぇお兄ちゃん! 和音(かずね)がお兄ちゃんのこと好きだって……気付いてる?」  とうとう我慢できなくなって、溜め息混じりにそう問いかけたら、『可愛がってる姪が叔父を好きなのって何か問題あんの?』って、鈍感ですか!?  私のことを、温和(はるまさ)がやたらと鈍感娘って言うけれど、きっとお兄ちゃんもだ。 「和音(かずね)のそれは恋愛感情の“好き”です!」  電話だから睨み付けられないのがすっごく残念!  私が声に怒気を滲ませてそう言ったら、電話口で息を飲む気配があった。 『マジか』    ややしてポツンとつぶやかれた言葉に、私は「マジです」と冷ややかに返す。 『なぁ音芽(おとめ)。――俺、いま本気で好きな子いんだけど』  あまりに鈍感すぎる兄が腹立たしくて、危うく彼が人生最大の告白をしてきたのを聞き逃しそうになってしまった。 『こりゃ、和音(かずね)にもちゃんと伝えとかなきゃまずそうだな』  って。  ん!? ん!? んーっ!?  いま、お兄ちゃん、何て言ったの!?    好きな……子がいる、とかなんとか……言わなかった!?  き、聞き間違いじゃない、よ、ね?  あの“遊び人”で有名だったお兄ちゃん、が!?  ひゃーっ。嘘でしょ!?  瞬間、和音(かずね)のことがポォーンと頭から飛んでいってしまうぐらい、それは私にとって衝撃の告白だったの。  お、お母さん、何か知ってるかしら?
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