スタ特⑥『Eight years later』

25/36
前へ
/698ページ
次へ
 う~ん。やっぱりぴんと来ない――。  だって。 「兄は……私に対してはただひたすらに意地悪だった記憶しかないんです……」  恐る恐るそう言ったら、「鳥飼(とりかい)は愛情表現が下手だからな」って……。  そこで雨宮(あまみや)さんは苦笑まじりに温和(はるまさ)を見ると、「まぁそれは霧島(きりしま)も同じだったか」と付け加えていらして。  後半は納得しつつも、やはり前半は嘘でしょ?と思ってしまう。  お兄ちゃん、あんなに好き勝手やる人なのに?  私を前にすると嫌がらせばかりしてきてたお兄ちゃんが、私を陰でいつも守ってくれていたって……本当の話ですか?  温和(はるまさ)が、「俺の件はともかく……奏芽(かなめ)に関しては俺と奏芽(あいつ)、結構いいコンビだったんだから、間違いねぇって保証してやるよ」って言うんだけど……うーん。  そもそも、2人は私を“何から”守ってくれていたのかしら? 学生生活ってそんなに危険に溢れてた?  さっぱり分からないのです。  眉根を寄せる私を見て、雨宮(あまみや)さんが、「音芽(おとめ)ちゃん、男どもの間で“鳥飼(とりかい)妹は可愛いのにガードが甘めで狙いやすそう”って有名だったの、知らないだろ? そんななのに悪い虫に悪戯されなかったのはさ、鳥飼(とりかい)霧島(きりしま)のおかげだって断言してやるよ」とつぶやいた。  悪い虫――。  うー。私、鈍感だという自覚はあったけど……それに加えてそんなに隙だらけだったの?  眉根を寄せる私に、「男の前で転んでパンツ見せるような女、隙だらけに決まってんだろ」とかっ!  パンダちゃん事件はいい加減忘れてくださいっ! さすがにもうあのショーツはないんだし!
/698ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3103人が本棚に入れています
本棚に追加