スタ特⑥『Eight years later』

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「おう、音芽(おとめ)。お前も買い(もん)か?」  こちらは話しかけるの、めっちゃ躊躇(ためら)ったと言うのに!  いつものように自然体で話しかけてくるお兄ちゃんに、私は思わず吐息を漏らす。  それにしても、よ――。  いつものお兄ちゃんなら、一緒にいる女の子にベタベタと腕を掴まれて、それを振り払おうともせず相手のしたいようにさせている、って印象なんだけど……。  今一緒の彼女さんは……むしろお兄ちゃんとの間に15センチぐらい距離を空けちゃってる……?  それがすごく新鮮で、思わずじっと見つめてしまった。 「音芽(おとめ)、見過ぎ。凜子(りんこ)に穴があく」  お兄ちゃんに苦笑されて、私は思わず「あっ」と思う。 「ご、ごめんなさいっ」  相手の子――凜子さん?に対して失礼なことをしてしまった。 「えっと、私、奏芽(かなめ)の妹で、霧島(きりしま)音芽(おとめ)っていいます」  言ったら、凜子さんがすごく慌てたように頭を下げてきた。 「あの、――和音(かずね)ちゃんのお母様、ですよ……ね?」  わわわ。彼女、和音(かずね)を知ってるの?  そういえば前にお兄ちゃんが、和音(かずね)から何か聞いてないか?って言っていたのを思い出す。  和音(かずね)、何も言わなかったけど……きっとライバルの出現にソワソワしてるんだろうなぁ。 「はい、和音(かずね)はうちの娘です。その、もしかしてあの子、あなたに何か失礼なこととかしたりしていませんか?」  和音(かずね)の性格からして、黙って身を引くとは思えない。きっと、無謀にも彼女さんに喧嘩とか売ってそうで怖いっ。  思ったけれど、彼女さんにフルフルと首を振られてしまった。 「わ、私が……彼女と奏芽(かなめ)さんの時間を邪魔してしまったのが悪いのでっ」  って、言葉とは裏腹、和音(かずね)め、彼女さんに絶対何かしたな!?って思わされて苦笑する。  ホント、気が強い娘でごめんなさいっ。
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