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「おう、音芽。お前も買い物か?」
こちらは話しかけるの、めっちゃ躊躇ったと言うのに!
いつものように自然体で話しかけてくるお兄ちゃんに、私は思わず吐息を漏らす。
それにしても、よ――。
いつものお兄ちゃんなら、一緒にいる女の子にベタベタと腕を掴まれて、それを振り払おうともせず相手のしたいようにさせている、って印象なんだけど……。
今一緒の彼女さんは……むしろお兄ちゃんとの間に15センチぐらい距離を空けちゃってる……?
それがすごく新鮮で、思わずじっと見つめてしまった。
「音芽、見過ぎ。凜子に穴があく」
お兄ちゃんに苦笑されて、私は思わず「あっ」と思う。
「ご、ごめんなさいっ」
相手の子――凜子さん?に対して失礼なことをしてしまった。
「えっと、私、奏芽の妹で、霧島音芽っていいます」
言ったら、凜子さんがすごく慌てたように頭を下げてきた。
「あの、――和音ちゃんのお母様、ですよ……ね?」
わわわ。彼女、和音を知ってるの?
そういえば前にお兄ちゃんが、和音から何か聞いてないか?って言っていたのを思い出す。
和音、何も言わなかったけど……きっとライバルの出現にソワソワしてるんだろうなぁ。
「はい、和音はうちの娘です。その、もしかしてあの子、あなたに何か失礼なこととかしたりしていませんか?」
和音の性格からして、黙って身を引くとは思えない。きっと、無謀にも彼女さんに喧嘩とか売ってそうで怖いっ。
思ったけれど、彼女さんにフルフルと首を振られてしまった。
「わ、私が……彼女と奏芽さんの時間を邪魔してしまったのが悪いのでっ」
って、言葉とは裏腹、和音め、彼女さんに絶対何かしたな!?って思わされて苦笑する。
ホント、気が強い娘でごめんなさいっ。
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