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私の苦笑を見て、彼女さんが慌てたように居住まいを正した。
なんかすごく真面目なお嬢さんだ。
「――あ、も、申し遅れましたっ。私っ……えっと、お兄さんと……その、お、お付き合いさせていただいています、向井凜子と申します。その、音芽さんのお噂は……奏芽さんからかねがね……」
言われて、私は思わずお兄ちゃんを見る。噂ってなに? 絶対ろくなこと言われてない気がするんだけど!
思ったけれど、お兄ちゃんに「可愛い妹だって話しただけだよな? 凜子」って先手を打たれて、凜子さんの口を封じられてしまった。むぅ、悔しいっ。
「はいっ、あの、妹さんのことは……おさげがよく似合う、奏芽さん似の可愛らしい方だって伺ってて……。私もおさげなので……その……奏芽さんが見初めてくださったのって……音芽さんのお陰かなって……」
もう一度ペコリと頭を下げられて、その拍子にゆるっと編まれたおさげが彼女の顔の横に落ちた。
それを見て、凜子さん、おさげが似合うのはあなたの方ですよー!とか思ってしまった。
だって私、彼女みたいにこの髪型、似合ってないって自覚があるの。
これは温和には悪いけど、絶対髪、切り時ね。
お兄ちゃんが凜子さんとお付き合いしてるってことは……これからも彼女とは顔を合わせることになるかもしれないわけだし。
差別化、絶対大事!
まぁもっとも、お兄ちゃんが今までの子たちみたいに、凜子さんともすぐに別れてしまうことがなければという前提での話なんだけど。
そこまで思って、私はまたしても凜子さんを見るとはなしに見てしまった。
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