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episode4『開けて通すとか通さないとか』
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「そんなわけでね、私、髪の毛切ろうと思って」
お砂糖を買って家に帰ると、私があまりにも遅かったからと、温和が心配して和音と一緒に私を捜索に出ようとしているところだった。
玄関で鉢合わせになって、驚いた私は、
「もぉ、心配しすぎ! 三十路を越えたこんな子持ちの私に興味を持つ男の人なんていないから大丈夫よ?」
そう言って笑ったら、「俺はそんなお前が、どんな異性より魅力的に見えんだけど?」ってムスッとされた。
か、和音の前でまたそんなっ。
恥ずかしくてソワソワする私を横目に、和音は父親のそういう言動に慣れっこなのか、全然気にした風はなくて。
それよりも――。
「ママ、凜子さんに会ったの?」
って……。
どうやらそっちの方に興味があるようです!
「うん。すごく可愛らしい女性だったよ」
凜子さんを褒めたら怒るかなって思ったんだけど、和音は一瞬ツンと唇を尖らせてから「そう、くやしいけどあの人、すっごく美人なのよ。――奏芽、趣味いいから」とか。
あら、和音。凜子さんのこと、綺麗な人だって認めてるのね。
そう思いつつ。
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