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episode5『幸せにならなきゃ許さないんだから』
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「ねぇママ」
一緒に並んでキッチンに立っていたら、和音がふと思い立ったようにつぶやいて。
「なぁに?」
私は買ってきたお砂糖を容器に移して、残りに封をしながら、のほほんと返事をした。
「奏芽って何歳ぐらいまでの女の子だったら好きになってくれると思う?」
「えっ!?」
わわわ。
なんかすごい直球な質問きたっ。
和音のストレートすぎる問いかけに、心の準備が出来ていなかった私は、思わず冷蔵庫から缶ビールを取り出しに来た温和を見遣った。
私の訴えかけるような、助けを求める視線に、温和がビールを手にしたままきょとんとする。
「そっ、そういうのはママよりパパに聞いた方が分かるんじゃないかな? パパ、奏芽お兄ちゃんと同じ男性だしっ」
転嫁するみたいに矢継ぎ早に言ったら、「それもそっか」と和音が納得したようにうなずいた。
ごめんっ。温和っ。バトンタッチ!
和音に見えないように身振り手振りでごめんなさいをしたら、温和が眉根を寄せて私を見つめ返してきて。
何のことだよ?って思ってるよね、うん。
その気まずさからかな。
私はキッチンに置かれた踏み台の上からピョン!と飛び降りて温和のほうへ近づいて行く和音の後ろを、思わずついて歩いて――。
「――パパ、あのね」
和音がさっき私にしたのと同じ質問を温和に投げかけるのをソワソワしながら眺めたの。
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