■*あなたがお尻に触れる理由/気まぐれ書き下ろし短編

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「キャッ」  音芽(おとめ)がキッチンに立って洗い物をしていたら、温和(はるまさ)がすぐ背後に立ってシフォン素材のスカート越し、音芽のお尻を(あわい)に沿って撫でてきた。  月に1度、温和(はるまさ)にはこんな風にやたらめったら音芽の臀部(でんぶ)に触れる時期がある。  いつもは首筋に口付けた後、背後から押し上げるように胸の膨らみに伸ばされる手が、その時期だけはとにかく初っ端からお尻のみを目指すのだ。 「もぉっ。お皿、落っことしちゃうじゃないっ」  音芽が振り返りざま、眉根を寄せて背後の温和(はるまさ)を睨むと、温和(はるまさ)が面白くなさそうにつぶやいた。 「チッ、まだかよ」  と。  音芽にだって、温和(はるまさ)のその言葉が何を意味しているのかは分かっている。  でもこればっかりは自分ではどうしようもないから、「ごめんね、もうちょっと待って」と応えることしか出来ない。
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