3103人が本棚に入れています
本棚に追加
「――音芽」
温和に、不機嫌さマックスの声音で呼びかけられて、私は座り込んだままビクッと身体を震わせる。
「は、はいっ」
条件反射でいい返事をしてしまうのは、幼い頃から身についてしまった悲しいサガと言うべきか。
「鶴見先生に俺たちの関係のこと、なんて説明した？」
きゃー。絶対、今、温和めっちゃ怒ってます、よ、ね？
「あ、あのっ、ち、小さい頃から一緒に育った……お、お兄ちゃんみたいな……存在だと」
恐る恐るそう答えたら、ギロッと睨み付けられる。
「あん？ お前いま何つった？ もう一回言ってみろ」
言うなり私の前にしゃがみ込んで、ほっぺたをギュッとつまむと、そのまま容赦なく引っ張ってきて。
「痛い、痛いっ。温和、やめっ」
本気で痛くて涙目で訴えたら、慌てて鶴見先生が「ちょっ、霧島先生、いくらなんでもやりすぎでしょう！」と止めに入ってくれて。
「部外者は黙っていてもらえますか？ これはコイツと俺の問題なんで」
頬から手を離すと、座り込んだままの私を当然のように抱き上げて、温和が鶴見先生を睨みつける。
最初のコメントを投稿しよう！