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「……お願、はるま、さっ。せめて寝室で……」
昼間っから夫を寝室に誘うとか、俺の嫁も随分言うようになったな。
そう思いながらも、確かにこのままリビングの窓際で続けるのは良くないな、と俺も思ったんだ。
何せここは玄関からも近いし、下手したら外から見えちまう。
俺の可愛い音芽の痴態を他人になんて見せてやる義理はねぇ。
それに……和音に見られたらまずいしな。
そう。何より懸念すべきはきっとそれだ。
小学校に上がったばかりの娘には、さすがに刺激が強すぎる。
音芽の実兄――不本意ながら今は俺の義兄でもある――奏芽から、「仲が良いのも結構だけどな、和音のこともちゃんと配慮してやれよ?」と釘を刺されたのをふと思い出す。
あいつ、変なところでやたら気がきく男だからな。
同じ日に同じ病院で生まれた幼なじみで腐れ縁。
俺に悪いことの全てを教え込んだのもあの男だけど、俺の暴走を食い止めるのもいつも奏芽なんだ。
その奏芽の声が頭の中に蘇ってきて、俺はチッと舌打ちをして音芽を横抱きに抱え上げた。
「ひゃっ。ちょっ、温和っ!? 私、自分で歩……」
言いながらギュッと身体を固くする音芽を無視して、俺は足早に2階――寝室――を目指す。
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