■*ふたりならきっと平気/気まぐれ書き下ろし短編

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「……お願、はるま、さっ。せめて寝室で……」  昼間っから夫を寝室に誘うとか、俺の嫁も随分言うようになったな。  そう思いながらも、確かにこのままリビングの窓際で続けるのは良くないな、と俺も思ったんだ。  何せここは玄関からも近いし、下手したら外から見えちまう。  俺の可愛い音芽(おとめ)の痴態を他人になんて見せてやる義理はねぇ。  それに……和音(かずね)に見られたらまずいしな。  そう。何より懸念すべきはきっとそれだ。  小学校に上がったばかりの娘には、さすがに刺激が強すぎる。  音芽の実兄――不本意ながら今は俺の義兄(アニキ)でもある――奏芽(かなめ)から、「仲が良いのも結構だけどな、和音(かずね)のこともちゃんと配慮してやれよ?」と釘を刺されたのをふと思い出す。  あいつ、変なところでやたら気がきく男だからな。  同じ日に同じ病院で生まれた幼なじみで腐れ縁。  俺に悪いことの全てを教え込んだのもあの男だけど、俺の暴走を食い止めるのもいつも奏芽(かなめ)なんだ。  その奏芽(かなめ)の声が頭の中に蘇ってきて、俺はチッと舌打ちをして音芽を横抱きに抱え上げた。 「ひゃっ。ちょっ、温和(はるまさ)っ!? 私、自分で歩……」  言いながらギュッと身体を固くする音芽を無視して、俺は足早に2階――寝室――を目指す。
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