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「あいつは賢い。きっとちゃんと避難してるさ」
実際娘の和音は歳の割にかなりしっかりしている。
何事にも動じず沈着冷静に対処していく様は、俺よりもどちらかというと奏芽に似ている気もするぐらいだ。
そうして、何よりあの子は雷を恐れない。
またピカッと光ってさっきのよりもっと大きな轟音が空気を震わせて、俺は思わず音芽を抱きしめる手にギュッと力を込めた。
そうしないと声が出てしまいそうだったから。
正直に白状しよう。
俺は雷が大っ嫌いだ!
音芽や和音と一緒にいる時は極力平気なふりをしているけれど、今だって本音言うと頭から布団をかぶって耳を塞いでしまいたいぐらいで。
いつもは和音が平気な顔をして母親をなだめてくれるから、俺はひとり彼女たちから距離をあけたところで、何とか平然としたふりをして恐怖心と戦っていられる。
けど、今は和音がいないから俺がしっかり音芽のこと、守ってやんねぇと――。
そう思うんだけど。
「温和、もしかして……震えてる?」
俺の身体の下。音芽が小さくそうつぶやいて、俺の頬へ触れてきた。
「そういえば温和も小さい時、雷が苦手だったよね?」
言われて、俺は小さく吐息を落とすと、肩の力を抜いた。
今更、か。
音芽とは幼い頃から一緒にいたのだ。
俺が雷が苦手なことなんて、とうの昔に知られているじゃねぇか。
和音の前ではともかくとして、こいつの前では隠すだけ野暮だ。
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